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第18話 キザキザハートの子守り歌

 「隣人203号です」
 「はぁぁぁ~???」
 真人の部屋は202号室です。
 「………」
 どうしたものかと考えあぐねいた真人は、携帯電話を取り出した。
 「ちょ、ちょまっ…!!」
 真人はその声を聞き入れず、ダイヤルを押した。

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第17話 「世界の中心で」、あるわけがない

 「お金ないなぁ…」
 家路を急ぐでもなく、だらだらと歩きながら真人はそんなことを考えていた。
 「どうして お金は へるのかなぁ~?」
 ここ最近は、ダイエットをしているカネゴン状態。たらふく食っていた記憶は、ない。
 「あ~あ」
 ため息をついて、真人は思うのだった。
 「心がすさむなぁ…」

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第16話 チリも積もれば山となる(仮)

 カチカチカチ
 時計の針が時を刻む音。
 カチカチカチ
 真人が落ち着きなく、ボールペンを押す音。
 カチカチカチ
 カチカチカチカチカチ
 カチカチカチカチカチカチカチ
 カチカチカチカチカチカチカチカチカチ

 「だぁぁぁぁぁーーーーっっっもうっっっっっっっっ!!!!!」
 真人は勢いよく、自らの部屋を後にした。

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第15話 女心と男心は、よく食い違うものだ

 「エリハ、ちょっと話があるんだが」
 「ん?なに?」
 先日の死闘がまったく嘘だったかのように、エリハはあっけらかんとしている。
 「それが言いにくいんだが…」
 「なによ、早く言っちゃいなさい。私に今更、言えないことでもあるの?」
 言葉を詰まらせている真人を促すエリハ。昨日のことは、本当に覚えていないのかもしれない。
 「じゃぁ言うぞ。よく聞くんだ」
 「なによ~、もったいぶっちゃってさっ」
 真人は一息ついて、言い放った。

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第14話 カンチガイも甚だしい、とキレられる

 デッドレース延長戦。夜中の11時に、それはまだ続いていた。
 「はぁ、はぁ…カンベン、してくれ…」
 電柱の陰に退避する真人。レース開始から小一時間、女とは思えないスタミナと執念強さで追い掛け回されていた。
 そもそも、追いかけられる理由としては、真人にも非がないわけではない。しかしながら、こうまでされていい理由にはならない。普通ではないのだ。
 「部屋に帰りたい…」
 外はまだ寒い。まして裸足など、どこの発展途上国の少年だろうか。
 「疲れた」

 カランッ

 ふと足を伸ばした拍子に、足元にあった缶を蹴飛ばしてしまった。
 「っっっ!!!」
 自分のしたことに声が出そうになったが、咄嗟に堪えた。
 恐る恐る、電柱から顔を出して辺りを見回す。誰もいない。
 安堵のため息をつく真人。

 すっと、後ろの闇の中から、白い手が伸びた。

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第13話 顔は口ほどにものを言う

 「あぁ…ひもじいよ…」
 絶食をして2日目。バイトがない日は、お金を払わないと食べ物にありつけない。そのため、低インシュリンやブッタの神様を信じるわけでもなしに、真人は絶食を余儀なくされている。こうも衰弱しきると、バイトが出来るのかも疑問なところだ。
 だがエリハは、
 「あ~、美味しかった♡」
 欠かさず食物を(過剰)摂取している。
 「ダイエットしようかなぁ~。美貌が損なわれるわん」
 傍若無人な限りを尽くしている。
 倒れこみながら虚ろな目でエリハを見つめると、それがだんだんと悪魔に見えてきた。
 「げ…げどう…」
 かすれゆく意識の中、真人は力なく吐き捨てた。

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第12話 不当労働と感じても、勢いで上司を殴ると危険

 エリハにカードを不正使用された、可哀想な青年真人くん。
 本来はずぼらな性格であるはずが、厄介者の王女様が住み着いてからというもの、やりくりに不安を感じ家計簿まで付け始めた始末。
 「え~いっ!」
 当の本人は、家主の苦労などどこ吹く風。今も、どこで勝手に買ってきたのか、メタルギアでエキサイトしている。女の子が楽しんでやるゲームにしては、変だ。
 帳簿といわず一切の履歴を残す気がないエリハは、物が売れてたらさっさと発送をしていた。そのため、真人は資金の流れがまったく把握できていないでいた。
 はたして赤字なのか黒字なのか。それすらも定かではない。
 赤字だったとして、この金の使いようであったら、サラ金に手を出しかねない。
 真人はひたすら危機感を抱き、エリハはお気楽気楽を貫いていた。
 しかし真人は先月から、
 「売上が分からないんじゃ、ウェンディーズには連れて行けない」
 と、リーサルウエポンを持ち出した。
 ウェンディーズをエサに脅迫することには気が引けたが、死活問題だからと、自らを納得させた。
 兵器は功を奏し、それは困るとばかりに、エリハは損益計算書を付け出した。
 粉飾決算をされそうで怖いが、やらないでいられるよりはいいだろう。

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第11話 財布は人に預けてはいけない

 「ただいまー♪」
 エリハ帰宅。その手には、コンビニ袋が提げられていた。
 「紅茶が冷めちゃったよ。お湯、沸かさなきゃ」
 「おいっ、これは何だ!!」
 憤怒する真人の手には、先ほどの郵送物の一つが握られていた。
 「あ、届いたんだ。後でオークションにアップしておくから、その辺に置いといてくれればいいよ」
 そう言って、やかんに水を入れコンロの火にかける。何事もないように。
 「そうじゃないっ!!買ったのかコレ!!」
 エリハが言うそれとは、

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第10話 この世はでっかいお宝島

 「今日はいい天気だ」
 真人は原付のヘルメットを取って呟いた。本日は快晴。見上げる空には雲ひとつない。
 「さて、一仕事終えて、さっさと戻りましょうかね」
 原付のキックを蹴り、エンジンをかけた。

 「ただいま戻りました~」
 「あぁ、真人くんお帰り」
 真人はオーダーの寿司を配達し終えたところだ。今日届けたのは、二人前の特上寿司。
 「まったく、昼食に特上の寿司を食いたいなんて人が大成するのかね」
 その逆で、大成したからかもしれない。真人が届けた先は、Fビル勤務の代表だった。受付嬢がそういって内線を繋いでいた。一人で二人前を食べるのだろうか。
 「まぁまぁ。そんな人あっての商売な訳だしさ」
 真人を出迎えてくれた寿司屋の奥さんは、テーブルに座って真人にお茶をすすめた。
 真人のアルバイト先の寿司屋は個人経営で、大将と奥さんが切り盛りしている。手先が不器用な真人は、配達係と雑用というわけだ。
 「そうですね、めったな事は言っちゃいけませんね」
 真人はそう言って、湯気が立つ緑茶を一口すすった。手にしている湯飲みに、茶柱が立っていたとは知らずに。

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第9話 泣きたい時は泣けばいい

 「イーーーーーンリーーーーーンッッッ!!!」
 インリンさん(の写真集)は、エリハによって見知らぬ人に引き取られたのでした。
 「てめぇ、その金で何を買ったんだ!!」
 「パフェ食べてきたの♪こーんな大きいやつ♡」
 エリハのジェスチャーでは、ジェンカ以上の大きさだ。森山中くらいのファットな子ならまだしも、エリハはすらっとスレンダー。遺伝なのか、どうなのか。同じ女子からは、憎まれるべき対象であったりする。
 「てめーーこの野郎ッ!!」
 「いいじゃない、別に。また買えばいいでしょ」
 「そういうことを言ってるんじゃねぇんだよ!!」
 二人の話は平行線をたどっている。いつもの事なのだが。

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第8話 どうにも釈然としないこともある

 「おい、それは俺の海老だっ!」
 「いいじゃない、ちょっとくらい。プリン体を気にしなさい」
 「そんなにしょっちゅう食ってないから大丈夫だっ!」
 ちゃぶ台を囲んでエビフライを取り合う二人。こう見ると、恋人同士に見えなくはないが。
 「も~らいっ♪」
 「あぁ…楽しみにとっといたのに…」
 好物は最後に食べるという人がいる。真人はそういう人間らしい。
 「うぅ…早く帰れよ…」
 エリハが押しかけ女房的に居座ってから、かれこれ一週間。故郷に帰る為の軍資金はというと…。
 「お前のせいで、こっちの家計は火の車だっ!!」
 当の家主が泣きを見ている状態らしい。

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第7話 自分の身を削るなら、それは汚い金ではない!

 「やっぱり、オークションよね!」
 エリハ王女の宝の地図とは、「オークションで稼ごう!」だったのです。
 ここにきて強引過ぎる展開。面倒だったんじゃないよ。いや、ほんとに。
 「突拍子過ぎる…」
 やっぱりそうかなぁ。
 「どうしてそう思う?」
 「私の王国は港町として栄えた。いわゆる、中間マージンでがっぽりなの。会社なんてつくれっこないし、個人ですぐ出来ることなんて、オークションくらいしかないわ!」
 なんてまぁ、苦しい後付け。
 「そんなことはない。もっと高額で即金なもはあるさ」
 ん?あるの?
 「え?あるの?」
 「それはな…」

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第6話 「いい女」は男が決めるものではない

 「マサトくん、おかわり」
 謎の王女(自称)にタダ飯を食わせ続けるようになった真人。
 「なぁ、お前帰る気あるのか?」
 もりもり食べる目の前の王女さまは、色気よりも食い気が盛んな食べ盛りにしか見えない。
 「ほーへ、ははひはおかへさへはいへはほへへいいほ(訳:そうね、私はお金さえ入ればそれでいいの)」
 口に食べ物を詰め込みながらしゃべる有り様。品の欠片もない。
 「どうしてこうなってしまったんだ…」
 時に神は、人間に厄を落とすものだ。それが疫病神。
 「マサト、お茶!」
 どうでもいいや。真人はそう思った。

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第5話 コリン星には山手線から行ける

 「ちょっとっ!いきなり追い出すなんてひどいじゃないっ!」
 「じゃかぁしいっ、帰れ!おまえもあっちの口やろ!!」
 「どっちの口よ!」
 真人はその口が嫌いなような。その口というのは、出身地がチョコレートでできているとか、妖精が見えるとか言い出す、どうにも夢見がちな女の子たちの事を指す。
 「あけなさーーい!!」
 ドンドンとドアを叩く音は続く。
 「嫌だ」
 「どうしても開けない気ね」
 「あぁ、もう関わり合いたくない」
 けんもほろに言い捨てられる女。童貞のくせに、生意気なシチュエーションだ。
 「すーっ…」
 女は息を吸い込んで、

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第4話 やるべきかやらざるべきか、どっちにしようかな~

 「何だこのやる気のないタイトルは!」
 食ってかかるな。やる気なんか、毛頭ないわ。
 「誰も見なくなるぞ」
 初めから、誰一人としてみてないから安心して。
 「そんなんだと、後々の辻褄が合わなくなって『え~い、やめてまえ~』ってなるぞ」
 そうかもね。
 「アナタ、さっきから何独り言いってるの?」
 「いや、何でもない。ところで、何だよ儲け話って?」
 女はまた、不敵に口元をほころばせた。
 「そうね、儲けるかどうかは、アナタのセンスに懸かってるわ」
 「あ、っそう」
 真人はどうにも気がなさげに言い放った。無気力さとは別に、ここで『ハイ、のります!』と言わない辺りは常識人である。
 「いいよ、チューチュートレインでしょ?そういうの、俺興味ないから」
 「あら、面白いこと言うのね。『ねずみチューチュー、みんなで電車ごっこ』ってところかしら?」
 「あぁ、そんなところだよ。大方、あんたも洗濯機や化粧品でも売りに来たんだろ」
 皆さんも、大して親しくもなかったのにいきなり連絡を取ってくる人には気をつけましょう。足の裏を見て、神を感じることができる宗教も然り。
 「違うわよ。そういんじゃないの」
 「だったら何だ?健全なビジネスの話を持ちかけるなら、俺みたいなのを無作為に選ぶのはどうかと思うぜ」
 「わかったわよ、言うわ。何でアタシが、アナタみたいな何もしなくてニート一直線の社会の汚点的存在もいとわず選んでいるのかを」
 一気にまくし立てる女。言われもない非難に、真人の眉間がピクッとする。

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第3話 長いくだりはもう終わりだっちゃ

 「って、惚れるかぁぁぁいっ!!」
 持っていたチラシを丸めてピシャリと叩きつける真人。ギャグ漫画で在りがちなツッコミなのさ。
 「あんた、何の用だよ。お呼びじゃねぇよ、ハッキリ言って」
 「随分ね、アナタから呼んでおいて。ほら、これよ」
 女は転がっているチラシを拾い、広げて見せた。
 「新手のデリヘルか」
 「違うわよ。あなた、若いのに溜まってるでしょ?」
 「うるさいっっ、ちがうわいっっ!!」
 どうにもあっちペースなのが気に入らない真人。話のうまい女は、やっぱり世渡りもうまい。
 一息すって、真人はクールダウン。
 「あんた、呼ばれてきたって言ったよな?しかし、俺はあんたみたいなデリヘル嬢を呼んだ覚えはない。誰からか頼まれたのか?」
 「いいえ、あなた本人からの電話よ。したでしょ、電話?」
 昔の吉岡美穂のように、かけてミホの手の真似。
 受話器を見る真人。ついでにチラシも。どうみても、ピンクピンクで新宿でよく見るものと同じ臭いがする。
 「投げ込まれたんだよ、これと一緒に。で、強引な客引きに苦言を述べてやろうとしただけだ」
 「あら、そのこと?」
 口元をほころばせる女。ここのアングルがたまらないんだな。
 「それ、アタシがやったのよ」

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第2話 男は正直な生き物だ!

 ダイヤルプッシュ
 プルルルル
 ガチャ
 繋がった。
 「あの、もしもし!」
 威勢良く切り出す真人。素人(注:真人は童貞です)だと思われたくないため、相手のペースに載せられないように。
 「こちら、配送物自動受付センターです」
 受話口から聞こえてきた声は、なんとも味のないお姉さんの声。いつ聞いても同じなんだろうな。
 「俺、やられたのか…」
 いたずらだ。そう思った。

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第1話 神の裁きって、理不尽?

 「今日はなんて天気のいい日なんだ」
 真人は、窓から差す朝日を眺めつつ、そう呟いた。寝転がりながら。
 本日は晴天、そして平日の午前11時。健全なサラリーマンが靴底を減らし、下げたくもない頭を必死に下げて商談にこぎつけようと躍起になっている最中。この青年は、布団から出ずに心にもない言葉を口にした。
 そしてズボンに手を入れた。そのまた下にも。ポリポリ掻いた。
 ずぼらを絵に描いた、現代社会の悪い見本。
 散らかった部屋。ゴミ袋で靴が見えない玄関。
 残念ながら、彼は大学生であるため「ニート」には属さない。紙一重で。
 「あ、今日バイトだ」
 真人は週3日のアルバイトをしている。デリバリー寿司でだ。
 「嫌だなぁ。行きたくないなぁ」
 これ以上の怠惰を求める、ダメなニート候補生は呟いた。
 頭をポリポリと掻いた。めったに開けないであろう窓から差す陽で、部屋中に飛散する埃が肉眼でも見える。フケも。
 「あぁ、楽して儲けたいなぁ」
 そう言って、真人は枕元からリモコンのスイッチを入れた。
 顔面に埃のパックをしたテレビからは、顔面が浅黒い元キャスターが電話の向こう側の人妻に説教をしている。
 「フリーが付いて儲かってるの、コイツとジャストミートだけだよなぁ」
 フリーターと掛けているこのギャグも、空しく、辺りのゴミ景色の中に消えていった。
 「時間はあるのに意欲はなし、か」
 ブラウン管から聞こえる喧騒をほったらかしにして、真人は午後のアルバイトまで、陽気に包まれつつ一眠りを決め込んだ。
 丁度まぶたを閉じたその瞬間、斜め45度の鋭斜角で窓ガラスを突き破り、異物が真人の顔面を直撃した。

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