第15話 女心と男心は、よく食い違うものだ
「エリハ、ちょっと話があるんだが」
「ん?なに?」
先日の死闘がまったく嘘だったかのように、エリハはあっけらかんとしている。
「それが言いにくいんだが…」
「なによ、早く言っちゃいなさい。私に今更、言えないことでもあるの?」
言葉を詰まらせている真人を促すエリハ。昨日のことは、本当に覚えていないのかもしれない。
「じゃぁ言うぞ。よく聞くんだ」
「なによ~、もったいぶっちゃってさっ」
真人は一息ついて、言い放った。
時は流れて30分後。静かな時間が流れる。
ここ最近、自分の部屋で静寂を感じたことはなかった。そう言い切っても良いほどの、スピーカー娘がいたからだった。しかし今はいない。
なぜそうなったのか。30分、巻き戻してみよう。
「お前、最近太ったな」
真人は言い放った。
「っっっん、なっっっ!!!!」
エリハ、驚愕。真人の思いも寄らない告白に、言葉も出ない。が、その代わり、
パシィィィィィィィンッッッッ
手は出た。
甲高い平手打ちの音が、部屋中に響き渡った。
そして奥の部屋に引っ込んだエリハは、ガタガタと物音が出るほどに慌ただしく、荷物を大きなバッグに詰め込み、この部屋を出て行った。
嵐が過ぎ去ったかのような、真人はそんな心持でいた。
あっけにとられた真人が、ようやく口を動かした。
「あのバッグ、ヴィトンだった…」
と、いうわけでした。無理も無い?と思うだろうか。そうなのだろうか。
実はこれ、真人が考えた「節約をするための、最善且つ的確な作戦」だったのだ。エリハの食費に日々悩まされ続けてきた真人が、素直に聞くたまではないと踏んで、昨晩考えあぐねいた秘策だったのだ。
あの怒りようは想定外だったが、効果はてきめんの様子。ひとまずは成功といったことろ。
しかし、真人は腑に落ちないでいた。それは、
「またアイツ、勝手に無駄遣いして…」
ヴィトンが気掛かりなようだ。
ところ変わってここは新宿。二丁目に行けばハードな世界への入り口だが、そうでなければ夜に行くと危ない場所だ。女の子が行くと、もっと危ない。
そこにエリハはいた。
なぜ新宿なのかは大いに疑問だが、バッグを抱えしゃがみこんでいるエリハに、三つの影が近寄ってくる。
「お姉ちゃんひとりなの?俺たちと楽しいことしな~い?」
今時そんなことを言わないし書いていてむずがゆいが、悪いチンピラはこう言うものだ。たぶん。
かくしてエリハに危険な影が。あ、このチンピラはニューキャラじゃないよ。
to be continued
